最高の兄妹をとくと見よ! 魔法科高校の劣等生2章+間章

 小説家になろうで連載されているweb小説「魔法科高校の劣等生」が電撃文庫から書籍化されることが決まったようです。書籍化としては一番良い形であるかなと個人的には思います。

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 どうやら出版分は加筆修正して、現状公開しているものは今後も掲載し続けるみたいですね。読み比べなども出来そうです。私はつい先日2章と間章を読み終えたところですので、今回はその感想などを。
 1章の感想はこちら その兄への愛情は如何ほどのものか―『魔法科高校の劣等生』読み中―

 基本的な感想は1章のときと変わらないのですが、今回は話の舞台が学校の外に出て、他校生が多数出てきました。ということは、前に書いた妹がすごいということが、他所の学校の生徒に伝わるというわけなのです。どうよ、深雪さん、すごいだろう。という勝ち誇ったドヤ顔をしながら読みました。そしてそうさせるための書き方が上手かったように思います。それは盛り上げの上手さにも繋がっていて、つまりとっても面白かったというわけです。

 さて、タイトル「魔法科高校の劣等生」の魔法科高校というものについて私は少々思い違いをしておりました。主人公の通う高校のことだと思っていましたが、普通科、理数科、などに対する魔法科であって、魔法科高校は国内に九校存在するようです。となると劣等生という意味もまた変わってくるのではないかと思いましたが、特に解釈は思いつきませんでしたので、学校内での成績は悪い主人公のことと捉えておきます。
 前回は主に、妹の深雪さんについて語ったので、今回はその主人公について語ってみようと思います。主人公はそのタイトルが語るように、劣等生としての立ち位置で登場します。入学試験や入学後の試験の実技において、彼は確かに低い成績でした。優秀な生徒を一科生、そうでないものを二科生とした学校の制度において、ペーパーテストではトップであったにも関わらず、二科生としての入学です。かといって、知識だけあって、魔法が全然ダメなキャラであるのかと言ったらそうではなくて、授業や試験においての魔法は低能でも、ひとたび実戦(形式)となれば、主人公に相応しく、あるいはそれ以上のいわゆる「厨性能」を見せるのです。
 理屈は無論作中で説明がありますが、私はこれを、ソフト的にもハード的にも天才的な知識があり、高度なプログラムはおろか、機械語を操ることが出来るのに、マウスさばきや、タイピングが異常に下手な人というような印象を抱いています。チャットしてると返事遅くて相手がいらいらするような人なのに、ひとたび作業をし出したらもうとんでもないものを作っているという感じですね。
 そんな主人公ですので、彼のことを劣等生と認識している人は作中に出てこないと言っていいでしょう。(二科生であることへのやっかみは存在していますが)それどころか、学生レベルの知識、技術ではなく、プロとしても最高レベルであると認識されつつあります。
 
 ところで、最強すぎる主人公ってあまり良いとはされてなかったのではないかという思いが浮かんできました。少なくとも説得力なく、また理不尽に主人公が強いのはどちらかというと作品上欠点ととらえられがちです。
 では、この作品ではどうかというと、まず理不尽かどうかに関しては、主人公には悲劇的な過去が隠されていることが挙げられます。悲劇があったから強いというよりは、強かったから悲劇があったという形のようですが(第4章が過去編のようですので、そこで詳しく語られるのだろうと踏んでますが、まだ読めていません)また血筋でもあるようですね。
 強さに説得力があるのかという問題においては、強さの表現が魔法の設定やその運営に依るところが大きく、つまりは作者の技量に直結しているので、主人公が凄ければ凄いほど、作者すげええとなっているような気がします。

 そうして主人公が何よりも最強であること受け入れた後に、妹、深雪さんを見ます。深雪さんは、最高に素敵なのですが、その最高さを演出する鍵になるのが主人公なのです。最高妹と最強兄でシスコンブラコン同士というコンビが期待を裏切らずに、活躍するのです。そして、この二人が、通う高校から、他所の8つ高校へ、と周知の幅を各段に広げるのが第2章でした。
 ハーレム物でもそういう面があると思うのですが、既に読者が周知しているキャラ魅力(あるいは展開)を新キャラが知っていくという図は非常に楽しいものがあります。上にも書きましたが、そこのところを作者がよく理解して書いてるのだろうなあ、という広め方でした。そしてただ単に広まって良かったという話ではなく、広まったことが悪い結果になるかもしれないという作りになっているのが、作者の技量を感じます。
 さて、次は3章を読むとしますか。