魚屋さんはかっこいい! ―『行徳魚屋浪漫スーパーバイトJ』1巻―

行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ(1) (少年チャンピオン・コミックス)

行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ(1) (少年チャンピオン・コミックス)

 緑のエプロン、白い長靴。漫画家のNJ先生はスーパーの鮮魚部で絶賛アルバイト。日記マンガが受けるとあらば、そいつをネタにするしかない!
 『行徳魚屋浪漫スーパーバイトJ』はギャグ漫画家、沼田純による実録魚屋アルバイト日記漫画です。作者はこの作品以前から鮮魚売り場に勤めていることをネタにしていたので、ファンにとってはついに、NJ先生の魚屋のベールがはがされたという感慨深い作品であります。当初は短期連載だったものが正式連載へと格上げされ、とうとう念願の単行本化に至りました。週刊連載といえども、1話4Pという短さからこの1巻には35話までが掲載されています。つまりは35週分、その長さを思うと喜びも増すというものです。

 それではこの『スーパーバイトJ』はいかなる日記漫画なのか。

魚屋さんはつらいというイメージがありますが
それに勝るかっこいい所がいっぱいあるのです

 と作中にも書かれているとおり、魚屋さんの良さを伝える漫画でありましょう。この漫画を読めばスーパーの鮮魚部で働きたくなること請け合いです。
 パートのおばさん(■十台)は可愛いし、社員である主任は怖くもかっこよく(そしてこれまた可愛く)、基本的に最低なおじさんアルバイトは意外と侮れない。バライティ溢れる同僚と、お魚ネタの数々。魚介類薀蓄も身に付き、スーパーで出会う鮮魚部の方々を見る目も変わることでしょう。
 そう、魚屋さんはかっこいいのです。
 マグロの解体ショーという本格かっこよさから、ウミヘビを仕入れるという一味違うかっこよさ、パートのコジマさんの男前なかっこよさ、冷凍庫に入ったときに出る白い息が達人の息吹っぽいかっこよさ、バレンタインに刺身とチョコを抱き合わせるかっこよさ。
 様々なかっこよさを、時には楽しく、時には面白可笑しく描く、〝ギャグ〟日記漫画。それが『スーパーバイトJ』なのです。

 ちなみに、私が真似したいと思うかっこよさは「む、現れたな、朝6時!!」です。ただの六時起床を、かっこよく表現できる、かっこよさ探しの名人、それが漫画家、沼田純だと思います。
 もちろんかっこよさ以外にも、何気ないところから楽しさを、パートのおばさんや初老の編集長からかわいさを、そして何より面白さを。
 日常のバイト生活から毎週ギャグ漫画を作り出す、その才能が、今度こそ結果となって花開きますように、と2巻発売を祈りまして、筆を置くことにします。
 次巻も、スーパーバイト!