週刊少年チャンピオン 2011年9号感想

 ちょっと感想の書き方について悩み中です。特によかった数作について重点的に書くだけにしようかなとも思います。しばらく悩むので、書き方が変わるやもしれません。感想を書くことで自分と向き合っているので、作品数が多いとしんどいのです。


モメンタム 濱口裕司 第1話/二人の物語!?
 新連載。絵柄はとっつきにくいけど、中身は非常に真っ当なバスケ漫画になるだろう予感がしました。己の価値を教えてくれる人との出会い、そして唐突の喪失。その喪失とどう向き合うか。大事なものを失った二人の新たな出会い。いい感じのテーマが与えられたと思います。大事な人と、その人と共にあったはずの未来への弔いの形がぶつかっていくのでしょう。
 またバスケットの描写や、コマ割り、構図、演出といったネームの力もあり、骨太のかっこよさが紙面によく表れています。スポーツへの主人公の持つ特性が「良い流れ(=モメンタム)を呼び込める」という、ストーリーに直結した作りなのが上手いですね。そして第一話にしてその能力の説得力をきちんと描いたことが素晴らしいです。最高の第一話でした。不安点は絵柄(特に顔)なのですが、これはこれで慣れると癖になりそうな気がします。


バチバチ 佐藤タカヒロ 第83話/限界
 モンゴル出身の蒼希狼に、一度だけとはいえ稽古で負けた鯉太郎。何十番も取ったうちの、一度だけ……勝率から考えるとマグレと切り捨ててよさそうなものですが、鯉太郎は捨てておけないものを感じたようです。鯉太郎のライバルとして描かれている人は、みんなぬくぬくとは生きていません。自分が一番負けられない物を背負っていると思っていた鯉太郎が、自分だけが特別ではなかったのだと認識するエピソードもありました。学生ならいざ知らず、角界に足を踏み入れた者たちの覚悟は甘いものではありません。しかし、それをまとめて、生ぬるい国と斬って捨てる蒼希狼。国単位では事実なのかもしれませんが、個人を見るとどうでしょう。蒼希狼にも違った考えが生まれるのかもしれませんし、生まれずに己のままに進むのかもしれません。なんとも将来有望な同期達です。
 しかし、鯉太郎の前に立ちふさがったのはモンゴルの狼だけではありませんでした。それまで少し格が下であるように描かれていた田上にも、勝てなくなってしまいました。その理由は、体格。以前にも触れられていましたが、鯉太郎は太る体質ではないようで、真っ向からの押し相撲では勝てないことが浮き彫りになってしまいました。とはいうものの、どうやると負けて、どうやると勝てるのか、という悩みを繰り返して自分の取るべき相撲の形が見えてくることでしょう。暗くて周りが見えなくとも、そこはトンネルであるのです。


弱虫ペダル 渡辺航 RIDE.144 最終局面
 2日目ゴールまで、残り3km。各校アシストがエースを引っ張り、0.1秒でも早く、0.1mmでも前に、ただただ全力で。主人公校もライバル校も悪役校も何もない、純粋なスピード勝負の1話。全員が強者、そこに弱虫はおらず、勝者を決めるためだけの争い。今までの御堂筋の走りとは、強者と弱者をわけるための走りだったのでしょう。相手の心を砕き、弱者に落としてから確実に勝つ。それが今、強者を強者のまま戦い勝とうとしています。今泉や新開の克服した姿と共に、思考する余裕もなくただ走る御堂筋も見逃せません。(来週にあっさり御堂筋に騙されるのもまた一興ではありますが)


侵略!イカ娘 安部真弘 第172話・集中しなイカ
 宿題の終わらない栄子。分量や難易度よりも集中出来ないことのほうが問題であるようですが、そもそも勉強する気が起きないですし、夏が終わらないことを感じ取っていそうな栄子ですので、宿題を終わらせられないのも仕方がないのかもしれません。そう擁護したくなるほどに、駄目人間すぎる栄子でした。


ドカベン スーパースターズ編水島新司 
 微笑の広島移籍騒動に決着。カープと微笑の明日が繋がっているとしたら、あまり微笑ましくない結果となった気がします。広島でホームラン王! というような活躍にはならないのかもしれませんし、日本シリーズに出場できる可能性から考えると今後の出番も危ぶまれてしまいます。いつの日か、彼らがまた同じチームとなる日は来るのでしょうか。1試合が長い分、合間の展開は一気に飛ばして、次はオリジナル対決。オリジナルキャラクター路線はまだまだ続くようですが、よいことだと思います。



範馬刃牙 板垣恵介 第241話/最速と最強
 ボクシング界の頂点、ウィルバー・ボルトとは、元陸上の短距離選手であったようです。名前でなんとなくそんな気はしていましたが、オリンピックで100m世界新を叩きだした、あのボルトであるようです。ボクシングとは大地を蹴る格闘技であることから、世界最強の脚力から生み出される一撃は如何ほどのものなのでしょう。実在の人物をモデルとするキャラクターは格闘技者から政治家やコメンテーターに至るまでさまざまな人物が描かれてきましたが、こうきたかああああああ、と度肝を抜かれましたね。迫力と、想像の外の面白さ。烈との戦いが見たいのかというとそうでもないのですが、このボルト自身がどうなってるのかを非常に見たいのです。
 一方場面は変わって、オーガこと範馬勇次郎氏は、食生活を咎められたときの一人暮らし独身男性のような言い訳をして、読者を和ませてくれます。戦場生活が長かったら料理は作れるようになるのでしょうか。それはさておき、刃牙から向かうのではなく、両者が歩み寄ることにより戦いが始まるというのは、非常に象徴的である気がしますね。象肉のステーキとご機嫌な朝食の距離が埋まったとき、物語は始まる!


みつどもえ 桜井のりお 219卵性「飼い猫オーブーラン」
 みっちゃんのお腹が膨らんでいるのはポケットに手を突っ込んでいるからだ……と一瞬思ったのですが、手はコートのポケットにあるので、内側は膨らみませんね。さすが雌豚腹囲。しかし、その腹囲がいつもと違うことに気づくひとはの、呆れと心配のない交ぜになった表情がいいですね。しかし男子達が、猫語尾に反応するとは以外でした。どちらかと言えば、否定しそうな感じなんですけどね。


シュガーレス 細川雅巳 Vol.50 最後尾
 「立ち上がることに意味があるんだよ」シロは言いました。一度負けた相手でも、立ち上がれば次はわからない。一年最強だったシロと、威勢の良さだけが売りだった岳。実力の差は明らかだった二人が、引き分けという結果に終わったのは岳が立ち上がったからでした。二年の一年狩りによって奪われたヘッドフォンを取り戻せたのは、シロが立ち上がれたからでした。
 「結果なんて立ち上がってからじゃなきゃわからない」実力差がわからないと言われるシュガーレスですが、この思想の元描かれているからかもしれません。一度負けても立ち上がりさえすれば、次負けるとは限らない。そもそも彼らがしているのはルールもないケンカなのです。常に同じ状況での勝負はなく、立ち上がりさえすれば状況は変化します。だから彼らの力関係は刻一刻と変わっていくのだと思います。
 それはそれとして遅れてきた主人公、行列の最後尾の椎葉岳にスポットを当てるべく大勢の雑魚が登場しました。この漫画に関しては負けても立ち上がればいいし、かっこいいこと言えれば倒されてもいいと思っている私ですが、それでもやはり活躍はしてほしいのです。周防や矢坂兄弟という個人はいますが、今回の話は、九島VSそれ以外という構図ですので、雑魚相手の椎葉岳劇場も楽しみです。頑張れ主人公。


ハンザスカイ 佐渡川準 第51話・ふざけるな!
 空手をしているから不良なんて怖くない……そう思ってた時期が結城にもありました。しかし半座の喧嘩を目撃したときに、彼の中で何かが壊れました。その壊れたものを直視せず、他を鍛えることで無かったことにした結城。より厳しい稽古を積み、トラウマを忘れることに成功していました。半座と再び出会うことさえ無ければ、彼は上手く行っていたことでしょう。しかし、半座を前にした結城は、彼を攻撃をしてしまいます。不良だった半座を悪く思う気持ちはよくわかります。しかし読者としては、いざその過去をひも解いてみれば逆恨みだった、という思いは否めず試合でどちらが勝って、互いを認めるという落とし所では満足できないだろうと思っていました。そこに、今週ラストの一発です。今後の描き方次第ですけど、結城がただしく自分に向き合うにはこれしかなかったのかもしれません。半座にビビったことも、半座が空手に真面目なことも認めても認め切れなかった結城。試合前に半座にケチをつけたことからも、己の真の弱さに立ち向かってほしいです。次回、期待!


ケルベロス フクイタクミ 第五十二刻 凶鳥、麗し
 崩は、物質を用いて体を作る。烏崩がその物質に選んだものは、冬子先生でした。化けているわけでも取り憑いているわけでもなく、冬子先生の肉体が、すでに崩となってしまいました。狗骸への不信感から、戦う力を失った景に襲いかかる、残酷な事実。それでも、それでどうにかなるわけではなかったとしても、友恵が来てくれたことを嬉しく思いました。新たな犠牲となろうとも……景をあの状態から救えるのならば。いや、やっぱり犠牲は嫌ああああ。


スーパーバイトJ 沼田純 第34話・スリースターズイベント第2弾(前編)
 12月に行われたイベントのレポ。イベントというか、沢編集長漫画になっています。サンタ服の初老! ツイッターで初老と呼ばれたことにショックを表していましたけれど。


ナンバデッドエンド 小沢としお 第108話 やっちゃった
 タイマンして勝ったらみんままとめて許してやるよと、言い出したヤクザに対し、当初手を出せずにいた剛ですが、相手の理不尽な言葉に反応してつい、やっちゃいました。一発KO。タイマンとしては決着がついた形ですが、ドスを手にしたヤクザがどう出るか、ですね。仁義通すようなキャラにも見えないので、不安です。


クローバー 平川哲弘 第184話 お幸せに
 ショックを受けたからといって、3日も学校を休んで鳩に餌をやるケンジ。凹み方が、若くない……。ハヤトはやはり仲間思いですので、行動に出ました。相手のメイちゃんがイチゴが通っている高校ということは、ハヤテのとる行動は一つです。久しぶりの、イチゴ母の登場です。相変わらず、お美しい……!


はみどる! まりお金田 46曲目:デリケートに好きして
 3人とも、掃除姿が可愛いというか、働くための格好が似合いますね。いつもそうですが、今回は、3人もせりかもののかも、全員がとことんまで可愛いお話だと思います。顔やポーズや、服装といった改造もそうですけれど、それぞれの感情がほんとによかった。はみどるも、ほんと話を重ねるごとに、面白くなっていくので、楽しみです。


聖闘士星矢LC 原作 車田正美 漫画 手代木史織 第213話 答え
 最初の見開きが、もう宗教画のようです。描いている内容もそうなら、その絵自体が、もう神話的であります。「君の声も拳も届かない」と、アローンはかつていい、ここでまた言いました。しかし、テンマは叫びます。お前の声が届いたと。テンマは手を伸ばします。アローンを一人にさせないために。そもそもアローンは名前からして一人であるので、全てはこのためにあったのですね。「お前を殴れんのはもう俺だけだ!」 ああ、テンマ。君はほんとに美しい。


たまたまポンチー 山本康人 全8話
 思うところあって、感想をまるで書かずにいたのですが、短期連載が終了したということで、何かを書いてみます。14歳という色々抱えたお年頃の少年の前に、チンポの妖精が現れ、主人公のエッチな願いを(あんまり望まない方向に)叶えていく――。よくよく考えたら、先週まで載っていた短編「ノベルゴッド」と被っていたのではないでしょうか、チンポだけに。とかね、こういう下品なことしか言えなくなるから感想も控えていたのです。冗談です。私はエロは歓迎しますが、下ネタはあまり好まないので、この作品とは相性が悪かったのでしょう。青少年へ、性の欲望を持つことは間違っていない、というメッセージもあったのでしょうか。設定だけでは3〜5話がいいとだったと思いますが、途中のポンチー人間化のインパクトは見事でした。8話、単行本1冊分として丁度よかったのだと思います。単行本広告ページで、ショウチャン(チャンピオンコミックスの背表紙に載ってるヒゲ帽子)が「いい脱ぎっぷりだね!」と言っているのが面白くてたまりません。


ANGEL VOICE 古谷野孝雄 第182話 能力
 サッカーボールを40メートル以上、ライナーで投げるとは、さすが日本代表のキーパーを守れるとまで言われた男ですね。身体能力テストでよくあるハンドボール投げでも、40メートルは結構厳しいものです。体格、身体能力、運動神経、全てに恵まれたヒサシ。身長の低さをカバーするための努力で誰よりも上手くなった松田とは対照的です。しかしそこで、よりやる気を出す松田は精神も強いですね。松田に限らず、習志野実業の選手は皆、落ち着いている――と思いきや一人だけそうでもない選手がいたようですが、はてどうなるか。楽しみです。しかし、シンゴはいい加減ルールを覚えましょうよ。


キガタガキタ! 原作 つのだじろう 漫画 西条真二 第24話「恋侍<前編>」
 いきなりでかい鬼が現れ、その前で正座している二人に吹きました。なんだこのシュールな図。前回2話を使って首さんの好感度を上げたので、今回は吹石さんのターン! 鬼であり、侍であるガチ戦闘系の悪霊がやってきました。鬼形がどうなってしまうのか……よりもヒロイン吹石さんの性質の悪さが目立つひどい漫画ですね!(褒め言葉)



鏡の国のアニー 重本ハジメ
 読切。鏡の国から絵本作家を志す少女を見ていたアニー。才能の無さに悩み、夢を諦めようとする少女に、何か声をかけたくて、思わず世界を越えて少女の前に姿を現してしまったアニーだが、それは異世界のルールを破った許されない行為だった。
 という風に、少年漫画よりは児童文学チックなファンタジーという印象ではありますが、話の筋からアクションまで少年漫画として大事なものがしっかりと描かれており、熱い心や夢をかなえる力が気持ちよく入ってきます。絵は、少し垢ぬけない感じがありますが、それも含めて非常に素敵な漫画です。
 鏡という設定があまり上手く使われていないところとがわずかに気になった点ですが、演出上としては鏡も利用されており、最大限よく練られた漫画であると思います。作者の今後の活躍に期待するとともに応援していきたいです。


 来週、というかもう明日なのですが、新連載で一番キャッチーな「てんむす」が開始します。可愛い女子が食べるということで期待です。そしてみつどもえはオールカラーということで、わくわくが止まりません。来週はもう少し早く感想を書けたらと思います。