チャンピオン読者が選ぶ!このマンガが面白いぞっ☆2011 に参加!

 昔からブログを拝見させて頂いていて、近頃はtwitterでお世話になっている漫画脳のササナミさんが以下のような企画を発表されたので、いっちょやってみますよ。

チャンピオン読者版このマン的な何かを開催しようじゃなイカ!

秋田書店作品部門(週チャン作品除く)
対象:2010年に秋田書店から単行本が刊行された週チャン連載以外のマンガ作品
秋田書店以外部門
対象:2010年に秋田書店以外の出版社から単行本が刊行されたマンガ作品
週刊少年チャンピオン部門
対象:2010 年に単行本が刊行された「週刊少年チャンピオン連載」のマンガ作品
及び、週刊少年チャンピオン本誌2010年NO.1〜NO.52に掲載された読み切り・短期連載を含む全作品

ということであります。
それでは早速、と言いたいところですが、秋田書店部門(週チャン作品除く)は単行本をリアルタイムで買っている作品数が5つに満たなかったため不参加です。最初から躓いていますが、気を取り直して行きましょう。


秋田書店以外部門

1位 『薔薇だって書けるよ―売野機子作品集』  売野機子
白泉社  2010/3/26に発売 主に楽園Le Paradisに掲載
薔薇だって書けるよ―売野機子作品集
 短編集なので少し企画の意図から外れてしまう気もしないではないのですが、規定としては問題無さそうなのでこれを上げます。(読切ですが、楽園Le Paradisに毎回掲載されています)
表題作がデビュー作でして、これを読んだときに衝撃を受けました。私の中で漫画革命が起きたのです。少女漫画的な短編作品を好む人には本当にお勧めです。そうでない人にもお勧めしたいですけどね。好き嫌いは結構分かれるようです。
 「人によっては古さを感じるであろう絵柄で、しかし現代的な感性で、詩的なモノローグを用いた、大人向けの少女漫画」という作風ですが、作品というか、この読書体験はとてもとても新鮮なものでした。(作風の似ている漫画家を挙げることは可能ですが)
 そして単行本の装丁がまた素晴らしい。少女の背後に輝かしい世界があるんですよ。でも彼女はその窓に背を向け書物を手に、くだけた姿勢で幸せそうに微笑んでいる。この物語性が、売野機子の作品をあらわしているようにも思えます。そしてそれは、表紙の素材や、カバーの下によって完成しているのです。世界は――この物語は、透き通ってもいるし、磨りガラスのように曇ってもいます。それがとても綺麗なのです。大好きなのです。
「彼女は漫画を見つけ、
 世界は売野機子を見つけた。」 と帯に書いた上條淳士に拍手です。
 私にとって、この言葉は言い過ぎではありませんでした。衝撃の一冊です。


2位 『晴れのちシンデレラ』  宮成 楽 
竹書房  2010/11/27に3巻発売 まんがライフMOMO連載
晴れのちシンデレラ(3) (バンブーコミックス)
 お嬢様高校の才媛である少女が、かつて極貧だった頃に培った個性を隠しながら内からにじみ出る本来の気品で人気者になってる四コマ漫画です。身体能力が半端なかったり、野性味にあふれてたり、お嬢様にあるまじき貧乏性を引きずってたりという個性をいいように解釈されてお嬢様達の間で真のお嬢様として慕われておりますが、そう解釈されるのは、心の美しさ、本物の気品があるから、という理由がなんとも素敵です。ギャグとしてももちろん面白いので、わりと万人に薦められるのではないかと思います。


3位 『DEAR BOYS ACT3』 八神ひろき
講談社 2010/10/15に5巻発売 月刊少年マガジン連載
DEAR BOYS ACT3(5) (講談社コミックス月刊マガジン)
 こんなに面白いのに世間様の評価低すぎるんじゃないのちょっと? って普段思ってるので挙げてみました。講談社漫画賞少年部門受賞、アニメ化、ミュージカル化とされていて評価低いというのも妙な話ですけど、好きな人が語ってる様子を見たことがないもので。
 最新は5巻ですが、これは通産でいうと59巻です。連載開始時期はスラムダンクより早いんですよね、このバスケ漫画。長いだけあって、しっかり描かれた試合数も多いので、どうしたって似た展開の試合が存在してしまいます。それでも面白いのは、不利な状況から逆転することの面白さだけに頼らない試合を描いているからだと思います。バスケットボールの面白さを描けているのだと。(あるいは描こうとしているのだと)
 

4位 『月華美刃』 遠藤達哉
集英社 2010/9/3に1巻発売 ジャンプスクエア連載
月華美刃 1 (ジャンプコミックス)
 こんなに面白くていいのだろうか、という感想を初見で持ちました。単行本で読んでるのでまだ3話だけですが、その各話にとても色々なものが詰まっています。1話1話が1巻分くらいの重量感があるようで、作品からはけして重さを感じさせない、読みやすい少年漫画であると思います。躍動感や、みずみずしさの描写が上手く、痛さや毒と言った暗いものも適度な配分になっています。(前作はちょい過剰でした、大好物ですが)
 クーデターを受け国から逃げることになった姫の成長を、竹取物語とSFと和風ファンタジーで彩る、心躍る活劇です。


5位 『白磁』 モリエ サトシ
白泉社  2010/7/16に2巻発売(完結)ザ花とゆめ連載 
白磁 第1巻 (花とゆめCOMICS)
 「触れる」という行為のエロチシズムと、そこにある罪を、少女漫画特有の黒さと優しさで包み込んだ、刺激作。罪というのは、触る対象が女子高生であるという意味もありますが、他者を知ってしまうこと、大人になってしまうことへの怖れみたいなものです。
 セーラー服の女子高生に触れたかったり触れられたかったりしたら読むのが吉ですよ。(白泉社の)少女漫画慣れしていないと厳しいですが。
 汚いものに触れさせられずに育てられた画家の男が、女子高生にやられてしまうお話です。「白磁」とは女子高生の肌であり、男の感性であり、少女自身であり、この漫画の世界のことでしょう。
 まったく情報無しにこの漫画に出会った自分を褒めたいです。


週刊少年チャンピオン部門

1位 『シュガーレス』  細川雅巳
シュガーレス 1 (少年チャンピオン・コミックス)
 2010年のチャンピオンに何があるのか、と聞かれたらシュガーレスがあると答えます。ストーリーが上手いか、ちゃんとしてるか、と言われたらイエスではありません。作中で描かれるエピソードはどこかで見たことがあると言えましょう。不良がケンカをするのです。学校の頂点を目指したり、チームの内乱があったり、他校から襲われたりします。そのくせ、終着点以外は結構ブレそうになったりするアンバランスさがありますが、それを類稀なるセンスと卓越した描写で、毎週毎週驚きを与えてくれる作品です。目が離せません。とても楽しいのです。


2位 『透明人間の作り方』 増田英二
 2010年冒頭の新連載陣の中で一番好きでした。その鬱屈とした全ての毒にやられました。もともと長編向きの話ではなかったように思いますし、短期連載として綺麗に終わったのですが、単行本未発売は悲しすぎます。もっと読みたいですよ、何度も読みたいですよ。


3位 『ギャンブルフィッシュ』 青山広美山根和俊
GAMBLE FISH 19 (少年チャンピオン・コミックス)
 堂々の完結ということでランクイン。私がチャンピオン本誌を毎週買うようになった大きな要因がこの漫画にあります。ラストのマカオ編は、本当に出し惜しみせず、全てをつぎ込んだ、濃厚な盛り上がりでした。酷い目に遭う奴はだいたいヒロインなあたりが好きですね。一番酷い目にあった人がメインヒロインです。美華さんかゴッキーか悩むところですね。


4位 『ANGEL VOICE』 古谷野孝雄
ANGEL VOICE 18 (少年チャンピオン・コミックス)
 もっと評価されて欲しい、という意味も込めてこの順位です。サッカー漫画としても人間ドラマとしても、名作です。当初から長期を想定されて描かれてると思うので瞬間最大風速というものはそれほどでもないかもしれませんが、大事なことが力強く描かれてまして、じわじわと煮えたぎってきますよ。


5位 『破壊症候群』 阿部共実
 読み切りから。デビュー作でありますが、その感性と画力に惚れました。ストーリー自体もパーフェクトでしたが、やはりそれを表現するための全てが尋常を超えるクオリティでした。あんまり絵の上手い人の画風では無さそうなのに、めちゃくちゃ上手いっていうギャップもありますね。現在web連載中のドラゴンスワロウも最高です。




 以上、チャンピオン読者が選ぶ!このマンガが面白いぞっ☆2011でした。選んでみるとやはり難しいもので途中でやっぱりアレのほうがとか、これを選ばないのは……と葛藤がありました。そもそも順位をつけるのは苦手なのです。みんな面白いよ!
 今回は外れましたが、脳内ノミネートされていたものをいくつか。
 ひみchuの文子さま、ミカるんX、NIGHTMARE MAKERあたりが秋田部門で読んでますね。チャンピオン読者の方とのやりとりが今年一年で増えましたが(webで)、みなさんわりと出版社単位で読まれてて驚きました。秋田好きが多いですね。
 志村貴子作品(放浪息子青い花、かわいい悪魔)、石黒正数作品(それでも町は廻っている、ポジティブ先生)、麻生みこと作品(そこをなんとか、路地恋花)、中村明日美子作品(同級生シリーズ、ウツボラなど)、よしながふみ作品(大奥、きのう何食べた?)あたりはこの作者からどれを選ぼうかと考えてたらいつの間にか作者ごと外れていました。好きなのにぃぃぃ。
 単体では宇宙兄弟天上天下来世であいましょう、リューシカリューシカ、保健室の死神真月譚月姫うさぎドロップあたりが脳裏に浮かびましたが、断念。
 チャンピオンでは、木曜日のフルットみつどもえ幻仔譚じゃのめ侵略!イカ娘ハンザスカイ、Goofyあたりを選びたい欲求が付きまとっていました。
 どれもこれも面白いよ!

 やってみて、途中お勧めしてるように書いてますけど、実のところ自分が好きだってだけでそれほど勧める気持ちがないことに気づきました。ここにあげた漫画も面白くないと言う感想を見かけたことはありますし、他人が絶賛してても自分には合わなかったことも多々あります。
 もちろんそれは当然のことで悪いことではないです。面白い面白くないは読んだ人が自分で決めたらいいのです。
 また面白い漫画を読むのもいいけど、それほどでもない漫画を読むのも楽しいと思いますよ。(苦痛でない程度に)バカにしてネタにしてあざけって楽しむというスタイルは個人的には認めがたいですけれど。つまらない漫画を読んでしまうことを恐れずにいろいろなものを読んでみて欲しいなと思います。
 当たり外れ気にせず、いろいろな物語(漫画に限らず)に触れてみるのもいいんじゃないでしょうか。

 今年はチャンピオン感想以外にもいろいろな作品の話が出来ればなあと思います。最後になりましたが、本年もよろしくお願いいたします。