楽園三号『同窓生代行』
白泉社から出ている「楽園 Le Paradis」という雑誌(厳密にはコミックアンソロジー)をご存知でしょうか。
公式サイトをご覧いただくのが早いとは思いますが、
web増刊もかなり豪華なので、是非見ていただきたいところです。
宇仁田ゆみ・日坂水柯・中村明日美子・水谷フーカ・売野機子・シギサワカヤ・黒咲練導・二宮ひかる・竹宮ジン・沙村広明・かずまこを・西UKO・竹田昼・鶴田謙二・鬼龍駿河・武田春人・ニリツ―――のレギュラー陣に加え今号はゲストに林家志弦参戦!!
今、読みたい作家を集めた一冊。
楽園は、ここにある。
創刊号当時、作家買いしてた人が5人、単行本持ってた人がさらに3人という状況でした。
こいつは買わないわけわけにゃ、いかないぜ!! と迷わずに手にとって、すっかり虜になってしまいました。
この中で一人でも好きな作家いたら即買うべし、ってなもんですよ。
さて、雑誌のレビューと言っても何をやっていいものかわからないので、とりあえず一番気に入った話のレビューをしようと思います。
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『同窓生代行』 売野機子
モデルの卵として事務所に所属しているリカは、友達で、スーパーアイドルである庭野野ばらに、彼女の代わりに同窓会に出てほしいと頼まれます。
中学時代に苛められ、整形をしてアイドルになった野ばらのために、リカはわずかな情報をもとに同窓会へと潜りこむことに・・・。
悲しい結末だと分かって読む物語は
安心して読めた
リカは、結末を恐れる少女でした。
幸せはいつか終わりそうだから怖い。
不幸は、より不幸になりそうだから怖い。
それはそのまま努力への恐れとなり、モデルの道を諦め、学校をやめた田舎に帰らなければならなくなった彼氏と、関係を続けようとする意志さえ持てないのです。
「野ばらちゃんってどんな中学生だったの 参考までに」
「そうね 妖精かな」
今でこそ、妖精のようでお人形のような外見の野ばらですが、整形前はもちろんそんなわけはなかったでしょう。
誰にも認識されない。だから、妖精。
そんな中学生活を送った野ばらが、同窓会で何をしようというのか。
あたしのクラスメイトも
3年半後に会ったとき
誰もあたしのこと覚えてないかもねなんて
丹羽(庭野野ばらの本名)として同窓会に潜り込んだ、リカは案外簡単に受け入れられたことに、こう思います。
つくづくマイナス思考な子ですが、リカは野ばらのため、かつてのいじめっこを見返してやろうと、教わったキーワードを頼りに頑張ります。
いじらしい、とてもいい子です。
あたしたち
出来てもいない子供の似顔絵
交互に描いたりしたわね
同窓会中、リカは、別れた彼氏を思い出し、無意識に、それほどの想いではなかったと記憶を修正していることに気付きます。
でも、そうじゃない。あんなに、好きだった。こんなに好きだった。
やがて失われる可能性から未来を諦めたリカ。
キレイに生まれ変わったはずなのに、過去に何かを探す野ばら。
事務所に所属しながらもモデルを諦めた庶民。
モデル・女優として活躍するスーパーアイドル。
二人の未来と過去が、詩的な絵と、花の香りがする感性によって、紡がれていきます。
もう、この話から目を離せませんでした。
野ばらの可愛らしさは、乙女チックであり、しかもそれは整形によって造られたものだという。
それでもやっぱり可愛いんですよ、野ばらは。そもそもキャラクターの可愛さなんてものは、外見であれ内面であれ造られたものなんですけど、より造られた感じを強調して絵がれた野ばらがかわいい。人形みたいという言葉がこれほどまでに再現されているのも珍しいくらいです。
そして物語を通して、とある素材が配置されているのですが、それが最後に実を結ぶあたりの構成に本当やられました。
素敵なのです。
とにかく、素敵なのです。
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売野機子の魅力を語るには、その絵を外せません。
その絵は決して今風であるとは言えません、どこかレトロな線。それが詩的なモノローグと、読むものを惹きつける構図と、それぞれと互いに演出し合って、どこまでも魅力的にな画面になっています。
上は売野機子の初単行本『薔薇だって書けるよ』です。(表題作他が楽園1号、2号掲載)
この画像だけではわかりにくいかもしれませんが、もうびっくりするほど素晴らしい装丁なんですよ。是非とも実物を、手にとって、確認してほしいところです。
そして、帯の言葉がまたいいのです。
「彼女は漫画を見つけ、
世界は売野機子をみつけた。」
この単行本のつくりが、全て、売野機子の作品に、これ以上ないくらい合ってるんですよ。これだけのお膳立てをしてあげたくなる、作品。それが売野機子なんです。そして、この売野機子の実力が、まったく浮かない力作ぞろいなのが『楽園』なのです。
あと、プッシュポイントとして、女×女率も結構高いですよ。
百合姫などで、書かれていた作家も参戦しているので、是非にチェックをば!